FRP補強材*は、橋梁の緊張材、グラウンドアンカーの緊張材、補修・補強分野での補強筋として活用されており、その素材の特性を十分に発揮しています。一方、近年コンクリートの劣化や塩害による鋼材の腐食が構造物の耐久性を損なう事となり、膨大なストックとしてのコンクリート構造物の維持管理が社会的な問題となっています。このような状況の中、ライフサイクルコスト(=初期建設費+維持管理費+解体撤去費)を考慮した新規構造物の建設が必要との認識が生まれてきています。FRPは非腐食性材料であるので、コンクリート構造物の補強材として鋼材をFRPに替えることにより、補強材の腐食劣化が生じません。
建設用先端複合材技術協会(以下ACC)は、ライフサイクルコスト(以下LCC)の観点から、従来の建設で補修・補強による構造物の要求性能を維持する場合と、建設当初からFRP補強材を用いてその性能を維持する場合を比較することは有用であると考えました。ここでは、LCCの考え方の普及とFRPを用いた構造物の適用拡大の一助になることを期待し、「FRPを用いたコンクリート構造物のライフサイクルコストのケーススタディー」として取りまとめました。
その後、道路橋示方書およびコンクリート標準示方書の改訂があり、これらに準拠するように検討内容を見直すこととしました。同時に前回の検討結果の課題についても追加検討を行うものとしました。主な検討内容は以下の通りです。

1.コンクリート標準示方書の改訂内容に準拠するため、塩化物イオンの拡散予測の見直し
2.道路橋示方書の改訂内容に準拠するため、塩害対策区分と対策工法の見直し
3.新設の予防保全工法についてのみLCCを比較
4.FRP補強材の合理的な使用を追求したコストダウン
5.将来要する費用を現在価値に置き換えて考慮する現価法(割引率)について考慮

以上の結果を「FRP補強材を用いたコンクリート構造物のライフサイクルコストのケーススタディ・2」として取りまとめました。

*ACCでは、FRP緊張材(PC鋼材に相当)とFRP補強筋(鉄筋に相当)を総称してFRP補強材としています。
 
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